皆さんはメーカーやITシステム会社に業務委託することがありますか?
無駄な見積りで終わる日本人
大手企業等で新規事業をやったり、システム開発をやると、コミュニケーションの遅さ/時間の長さを痛感します。特にベンチャー企業と比較すると顕著だと思います。
特にお見積りの長さは最悪といっていいほどです。
1回1時間の打ち合わせを5回くらいこなして、ようやく「お見積り、今回は100万円となります」「わかりました、承認します」が出てくる。頭がおかしいとしか表現できません。
あらゆる観点で見積りする側もされる側も損します。全く新規の取引先だったとしても、見積りに至るまでの打ち合わせ回数は2回までにしておきましょう。3回以上やってると人件費の方が高くつくこともあります。
誰が悪いのでしょうか?発注する側もされる側も対応は遅いのですが、どちらかというと発注する側に原因があると感じています。
この遅さの一番の理由は日本人の
ギリギリまで予算を開示しない性質にあると思っています。
正確に言うと、予算を開示しないことで交渉っぽいことをやりたがる性質が原因です。予算を開示しないこと自体は交渉術の1つではあるのですが、見せないだけでは交渉になっていません。なので、発注側は一歩一歩しか前に進めないのです。これでは外国に負けるのは当たり前です。
本日の結論は1つで、
開示できる範囲で発注先に予算と概要を全て話せ。
です。もちろんNDA(秘密保持契約)を結んでおくことを忘れずに。
その理由を下記します。
予算を開示すべき3つの理由
①お金を損する
日本人は往々にして人件費を意識していません。
(見積もり以外でもしてないのですが・・・それはまた別の機会に)
部長クラスまで含めた社員の時給平均を2,000円とすると、10人で集まる会議は一時間で2万円です。数回集まれば10万円を越えます。百万円の発注をするのなら、相手は赤字です。そんな相手がまともな利益率で見積もりを出してくれるでしょうか?否、上乗せされること請け合いです。
そうなると本末転倒です。そもそも安く発注しようとしていたことが裏目に出て、高い価格でサービスを受けたり、製品を買わされる羽目になります。
むしろ、パッパと決めて「我々は迅速に要件定義をした、だから短納期になった分、安くしてくれ」と言った方が、よほど交渉術としては高等だと思います。
②品質が落ちる
業者はエスパーではありません。
「現在は1000万円のコストをかけているのですがどうにも厳しくて、どうにかしてくれるメーカーを探しているのです(意訳:500万円でお前たちは引き受けろよ)」という言葉を受け、受注側は「はい!800万円の見積もりを持ってきました!」というやりとりがあり、炎上するケースが後を絶ちません。
日本には空気を読めというハイコンテクストな文化が多すぎです。
発注側が目論見の価格(上記だと500万円)よりも安くしてくれないかなというスケベ心があることに加えて、業界一般からズレたことを言ってしまわないかどうか自信がないという理由でハイコンテクストになってしまっていると感じます。
③時間を損する
ぶっちゃけ、サクサク発注した方が安上りです。
10時間で1業者から見積もりを貰うより、10時間で5業者から見積もりをもらった方が比較ができるため真の意味でお得になるはずです。
タラタラやって金をもらう、それもいいのですが、プロジェクトの効率を考えていません。こういった考えでサラリーマン人生を進めるとダメリーマン真っ逆さまです。気を付けましょう。
上手な予算の開示方法
自分だけ開示しても実はあまり意味がありません。
自社予算は受注側との意識をすり合わせるネタの1つであって、当然こちらからバカみたいに開示しても意味がない、ということは理解しておきましょう。また、予算以外にも「そもそも依頼したいことってなんだ?」ということをアタマに入れておきましょう。
①予算を認識する
意外とプロジェクト担当者が予算自体を理解していないというケースが多くあります。今期いくら使えるのか理解してないと、そもそも話を進めるのは無理です。
そういう状態はやめましょう。すぐにでも課長以上にプロジェクト予算を聞いておきましょう。
また、「何を発注したいのか」イメージしておくことが大切です。食品OEMであれば原材料費や工場費用などは簡易に逆算できるはずですし、システムであればこんな機能が欲しい、ということを箇条書きでもいいので書き出して、システム会社にすぐたたきつけられるようにしておくとよいでしょう。
相手より要件を理解していると「お!コイツできるやんけ!」とシステム屋やメーカー側もこちらを信頼してくれるので、二重の意味でお得です。
②バッファを持っておく
予算を知ったら、バッファー(緩衝材)となる予算とカタい予算を確認しておきましょう。1,000万円であれば2割がバッファー、8割がカタい(使い切っても全く問題なさそうな)予算であるなど、その会社やプロジェクト毎に性質があるはずなので、それを上司と相談しましょう。
これだけは一般論がないため、会社の先輩や上司に色々伺っておきましょう。
③後出しする
後出しするというのは、遅く出すというわけではありません。
相手が見積もりをどう構成するか、見積もりの構成要素をあらあら聞き出してから開示するという意味です。
食品メーカーであれば、原材料費、工場人件費、品質管理費、物流費、営業担当の利益等、いくつか要素があるはずです。これをしっかり聞き出しましょう。良いメーカーであれば「ウチは営業担当者利益を商品の5%頂いております」等と開示してくれます。
システム構築であれば、プログラム設計の人件費、保守運営費、1アカウントあたりの費用、営業担当の利益等、要素があるはずです。これらも普通、明確になっていると思います。仕事がデキて、信頼できるところほど、こちらの質問にも答えてくれるものです。
ある程度相手の情報を引き出した上で予算を開示すれば、相手が値下げしようとしたとしても「それ、品質管理費を下げる気ですか!?それはやめて下さい」等と交渉(本当の意味で)ができるようになるため有利になります。
開示しない方がよい取引
予算を開示すべきでない打ち合わせもあります。
価格交渉の場です。
正確には「目的が価格交渉のみの打ち合わせ」です。既に取引があり、その上で値段を下げろ、という目的で設定されるミーティングです。
こういった時のポイントは落としどころの価格を相手から提示させるというのが交渉のコツです。決してこちらから「500万円あたりだといいですねぇ」等と行ってはいけません。それをベースに議論が進んでしまいます。
オススメ書籍
いかがでしたか?
もっと深く交渉術を知りたい場合は下記2冊を読みこみましょう。
【書籍】見積りの勘所
ストーリーで考える「見積り」の勘所 (開発の現場セレクション)
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- 出版社/メーカー: 翔泳社
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本稿で書いたような事例がもっと載っている分かりやすい資料です。ストーリー仕立てなので非常に読みやすいので、発注側の人間は必ず目を通しておくべきだと思います。
【書籍】すぐ見つかる英文
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外国とメールすることが多い場合は上記を手持ちで持っておきましょう。見積もりをどうとるかなどの用語がすぐ引けます。
また、過去記事ではこんなのもありますので参考に。
以上です。