「ランチェスター戦略」とは?商品開発・営業に必須のマーケティング理論を説明するよ

ビジネスをやる人は必ず覚えて下さい。

ランチェスター戦略とは?

ランチェスター戦略って聞いたことありますか?

聞いたことがあるなら、再認識してほしいし、聞いたことがないなら、この機会に理解しておいてほしい理論です。

一言でいうと、市場のシェアによって自社の取るべき行動が明確に分かるという戦略理論です。

この理論は弱者の戦略とも呼ばれています。新しい事業を起こして破壊的イノベーションをするためには必須の理論です。

特にこんな人に知ってほしい理論です。

ランチェスターの法則

「ランチェスター」で検索すると、Wikipediaにはこう書いてあります。

引用:ランチェスターの法則(ランチェスターのほうそく、英:Lanchester’s laws)とは1914年にフレデリック・ランチェスターによって発表されたオペレーションズ・リサーチにおける戦闘の数理モデルである。

第一次世界大戦際に、イギリスの技術者であるランチェスターが発案した理論で、2つの法則から成り立っています。

ランチェスター戦略はこの法則を元に作られたビジネス理論です。まずは「2つの法則」から理解しましょう。

【第一法則】

戦闘力=武器効率×兵力数

これは原始的な戦闘・戦争に適用される法則です。ざっくり言うと、同じ兵力数なら武器効率が高いほうが勝ち、同じ武器効率なら兵力数が多いほうが勝ちということです。織田信長は鉄砲で「武器効率」を高めることによって勝ちました。ローマ軍は敵の数倍という「兵力数」によって敵国を圧倒しました。

【第二理論】

戦闘力=武器効率×兵力数の2乗

広範囲での戦闘等、近代的な戦闘・戦争に適用される法則です。兵力数が2乗に比例するようになっています。すなわち、近代的な戦いにおいては数が有利ということを示しています。

市場シェア理論

この「戦争に使われていたランチェスターの法則」を、アメリカの数学者クープマンがビジネスに適用して導き出したのが「市場シェア理論」とも呼ばれる理論です。

これが現在、ランチェスター戦略と呼ばれています。

この理論の良いところは、市場シェア(ポジション)によって自分の取るべき行動がハッキリわかるというものです。

マーケティング理論というと、すぐに4Pや4C理論で考えがちです。

  • Product(プロダクト:製品)
  • Price(プライス:価格)
  • Place(プレイス:流通)
  • Promotion(プロモーション:販売促進)

もちろん、これら4P は重要なファクターです。しかし、市場の中でどういう風にシェアをもぎ取っていくかを議論しないと意味がありません。

大企業の議論でよくあるのが、「良いものを作れば売れて大人気になる」という幻想です。

良いものが売れる、というのは嘘です。

まずは市場シェアを一定レベルまで取らないと認知すらされないのです。

企業の新規事業プロジェクトはだいたいここでつまずいて失敗します。

そのため、プロジェクト関係者はランチェスター戦略を深く理解しておくべきなのです。

市場シェア理論とは

この市場シェア理論は、市場のシェアによって、ほぼどの業界でも確実に言える「これはOK」「これはNG」ということが定められています。

本当か?と思うかもしれませんが、新規事業立ち上げの経験のある私自身もこの理論は合っていると体感しています。

今回は、この図だけ覚えて下さい。

市場シェアによって10段階のステージに分かれています。

(本表は船井総研の本をベースに作成しました)

ポイントは「7%と11%」

営業部長が「新カテゴリーの商品を発売するぞ!営業はシェアをとれ!」と言ってきます。

あなたは営業部員。そう言われても、目標が曖昧です。

そりゃすぐ100%とれればいいのですが、そこまで甘い市場があるわけありません。

そんな時、市場シェア理論が役に立ちます。

覚えて下さい。

目標は7%と11%です。

7%は「存在シェア」と呼ばれていて、市場にあるかどうかをお客様が認知できるかどうかの境目だと言われています。7%以下のシェアなのに、「売れてない!シェアを獲れてない!品質が悪いからだ!商品開発に力を注ごう!」等とやっても、無駄だということです。

まずはお客様に認知してもらわないといけないということです。7%以下のシェアの場合、「プロモーションにどうお金をかければ露出できるのだろうか、TVはお金がかかりすぎるな」「(食品等なら)店舗の棚取りをどうすればいいのか」「(業務用商品なら)チラシやネット広告をすればいいのだろうか」「(ECなら)楽天やAmazon等に出稿して露出させた方がいいのか」等と言うことを議論しないといけない、ということです。

11%は「3番店シェア」と呼ばれ、他企業に「アイツはライバル会社だ」と理解してもらうまでになったという状態です。11%以上の企業が何かプロモーションや価格戦略等を変更すると、他企業にも影響がでるというレベルです。

第一段階として7%シェアを、第二段階として11%シェア以上を目指していくべきです。

ちなみに、26%以上になると「1番シェア」になります。ビジネスの感覚が無いサラリーマンは「え?26%って少なくない?」と思いがちです。しかし、26%って相当高い数値です。はじき出すのにはかなりの苦労を強いられることでしょう。普通の各業界は1位~3位が互いに11%~26%のシェアを分捕りあいつつ、「その他企業(1社あたり8%程度)」の合計値が40%程度・・・そんな業界がほとんどです。

市場の読み方

自分の会社が属している業界を改めて見直してみましょう。示唆に富むと思われます。ここでは、例として一部の業界を示してみます。自分の会社はECオンリーだからシェアが分からない・・・という人は「商品市場×EC化率」で仮算出するという方法をオススメします。分からない人は聞いて下さい。

出典:ニチレイホームページ

 

冷食市場は、マルハニチロとニチレイが2強。その下にテーブルマークと味の素がいる。そんな形です。

どの会社も31%の「寡占シェア」には届いていませんね?

なので熾烈なシェア争いが毎年行われているということが読み取れます。

販促や商品開発で内部は擦り切れているだろうと容易に読み取れます。

また、どこかの会社が買収・合併をすれば、業界は激変するでしょう。

ちなみに自動車業界もほぼ同じような構図になっています。

出典:読売新聞ホームページ

2017年4月時点でのノンアルコールビールのシェアはこんな形です。

結構いびつな形をしていています。

アサヒとサントリーの2強状態です。

どちらも「安定ステージ」に入ってしまっているため、キリンやサッポロが巻き返すのは至難の業でしょう。

「ノンアルコールビールはまだ発売されて10年くらいだから、まだまだ巻き返せるだろう」などとのんきに考えているキリンやサッポロの役員がいれば、そいつは無能だということです。

弱者は差別化戦略

市場シェアを分析した結果、「ウチってまだまだ安定ではない」という人。

最近、新事業を立ち上げたばっかりという人。そんな人は差別化をしましょう。

商品やサービスを限界まで絞り込んで作り込むことです。

例えば、「ハゲのオッサン」に増毛剤を売る。

これだと大手の有名商品に負けます。

では、どうするか。

「20代の若ハゲ」をターゲットに「若ハゲに効く増毛剤を売る」。こんな風に考えます。より具体的には「会社で勤めている若ハゲを狙う」等と言う形でもっともっと絞り込んでいきます。このように1点突破型で進むしか道はありません。

また、この場合、商品のクオリティも抜群でなければなりません。「他社とほぼ変わらない成分だけど、若ハゲに効くという売り方をしてみる」では全く売れないでしょう。他社が追いつけないレベルで一点特化していないと、突破していくのは無理です。

業種にもよりますが、差別化は沢山できます。

  • マズローの欲求五段階説
  • ペルソナマーケティング

等の理論が関係してきますが、今回はランチェスターの概説なので割愛します。差別化してシェアを獲る。また別の商品・サービスで差別化してシェア獲る・・・そして業界の中で安定シェアを勝ち取る!そういう骨太のストーリーが描けていないと、事業はやられます。やられないために、論理立てて考えましょう。

おすすめ本

論理立てて考えるためにはどうすればいいの?

高いコンサル会社入れてもバカらしいです。21世紀の今、なんでも書籍になっています。私がオススメするのは「船井流 数理マーケティングの極意」です。船井総研というコンサル会社が出しているビジネス理論のパッケージです。これが2,000円。安いものです。(船井総研のコンサルを雇ったら最低2,000万円はかかります・・・汗)

私はこの本を読んでランチェスターを理解しました。

またこの本は多数のビジネス・フレームワークが掲載されているためオススメです。

初学者にも分かりやすく書かれています。「いかに差別化するか」の手法論も載っています。

とりあえず今日はここまで!